調査会社の会長ブログ【松谷廣信】

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無名(沢木耕太郎)

会長日記2016/11/11

 土曜日、何時もの事ながら図書館に行く。単行本がズラッと並んだ本棚を漠然と覗く。すると、何故か、沢木耕太郎の欄に目が留まり、中でも「無名」が俺を読め!と叫んでいた。仕方ない、読んでやるか・・、「無名」を手にする。一冊では物足らない、もう一冊。すると、となりの「危機の宰相」(沢木耕太郎)が、俺にしろ!と猛烈にアピールしている。わかった・・今週は沢木耕太郎にするか・・・。

 大体小生が本を選ぶのはこんなもの。好きな作家は居るが、その人の本は図書館にある分は大方読んでおり、後は、漠然と本棚を覗く・・。すると、こうして自己アピールをする本が中に有るのである。貸出期間は2週間。従って、大体2・3冊を手にする。

「無名」から読み始めた。前書きも何もないので、どんな本なのかサッパリわからない。ただ題名にちょっと興味を惹かれただけで、別に読みたかったという訳でもない。読む本がないと寝つきが悪いからだけのこと。

 そんなんだから、途中で止める本も結構ある。また、数十ページも読み進んでから、あれ? この本、読んだことがある、などと云うこともしょっちゅう。

 その例にもれず、この本も、読み始めは「たいした事ないな・・」的な感じ。ただ、今少し読み進むと、何故かやめられない。そのうち、魅せられてしまう。読み終わった読書感は何とも爽やか・・。当分、沢木耕太郎でいくか的な感じであった。

「無名」。作家、沢木耕太郎が、全く無名の父親の事を綴った、追悼文的な本である。従って、面白くもなんともない。作家、耕太郎が、89歳の父の病床を見舞い、それから亡くなるまでの3ケ月間ほど、母や姉と交代で付き添いながら、父の病状、父との思い出、父の人となりを、ただただ淡々と綴っただけの本である。何の変哲もない溶接工であった父親の事を、何の気負いもなく、素のまままに書いているだけ。にもかかわらず、魅せられてしまい、目が離せなくなった。ある意味不思議な読書感のする本であった。

 これは多分に沢木耕太郎の文章力によるのだろうが、これほどに名もない無名の父親を、ただ素直に愛し、慕い、尊敬し、そして冷静に分析する、沢木耕太郎という作家に、この本一冊で魅せられた。

 因みに、彼は小生と同じ年らしい。

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