終わったひと(内館牧子筆) | 調査会社の会長ブログ【松谷廣信】就活に関する信用調査

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終わったひと(内館牧子筆)

2016年04月07日

 「お父さん、これ面白いよ・・。読んでみたら、共感するところ多いと思うは・・」.

先週女房が図書館から借りて来た、内館牧子の「終わったひと」を持ってきた。「エッもう読んだの」、「ええ1日でいっきに読んじゃった。内館牧子はおもしろい・・・」。

 共に読書が趣味で、2週間に1回、図書館で4〜5冊の本を借りているが、読書の傾向は違い、あまり同じ本を読むことはない。しかも「終わったひと」。何が終わったひとだ・・・。まだまだ終わっちゃいないぞ、共感なんかするか、と思ったが、口答えは禁物。まーそう云うのだから読んでみるか・・、くらいの気持ちで、本を手にした。

 読み始めは、なんだ・・、くらいの感覚であった。ところが3分1くらい読み進んむと、がぜん興味がわき、小生もいっきに読んでしまった。

 主人公は、盛岡出身。東大法学部卒の超エリートでメガバンクに就職。エリート街道まっしぐらで、同期の出世頭で40代で本社中枢の部長職につく。ところが、行内派閥の狭間で、関連会社に追いやられ、そこで定年を迎える。嘱託身分で残る道もあったが、プライドが許さず、潔く完全退職を決意。

どこかで悠々自適の隠居生活を夢見ないわけでもなかったが、いざ定年を迎えると、何をしていいやら・・・。仕事一途の企業戦士であっただけに、いざ定年を迎えると趣味一つなく、終わった人の悲哀をつくづく感じ、失意の中で悶々とした日々を送る。

カルチャーセンターやスポーツジムなどにも顔を出してみるが、どこもジジババの集まり。過去のプライドが邪魔をして、上手く溶け込めない。自然と日々の会話も消極的となり、妻には愛想をつかされそうになる。

そんな悶々とした日々の中にあったが、たまたまスポーツジムで知り合った30代半ばの青年実業家(ITベンチャー企業の社長)に声を掛けられ、年俸600万円で週3日勤務の顧問に迎えられる。

昔取った杵柄、経理財務に辣腕を振るい、社長以下幹部の皆から絶対的信頼を得て、水を得た魚の如く、活き活きとした日々が蘇る。人生の絶頂期であった企業戦士当時の意気が蘇り、彼女の一人もつくろかと思う程の元気を取り戻す。

ところが、あろうことか顧問就任1年足らずで、社長が突然死を遂げる。その時点で、本人も退職を決意。

ところが、若手役員陣が退陣を許さない。顧問の辞任どころか、社長に就任してしまう。元々仕事人間だけに、仕事となると燃える。会社業績は順調に推移し、名実ともに我が世の春を味わう。ところが、10ケ月ほどしたある日突然、東南アジアでの大型プロゼクトの取引先が倒産。3億円が焦げ付き、一挙に羅落の底。銀行を駆けづりまわるが、雨ふりに傘を貸してくれるような銀行はない。結果、倒産。社長は個人資産の全てを銀行にとられ、残るは妻名義の資産と年金だけ。

 そんな失意のどん底を味わっているやさき、母校の高校が、甲子園出場の地方予選で決勝戦まで勝ち進む。同級生から、応援に行こうとの電話。失意の中にあるだけに、望郷の念も募る。

 地方予選の球場に入るや、高校時代の友が勢ぞろいしている。あちこちから声がかかる。決勝戦の結果はボロ負けであったが、県下トップの進学校が野球の名門強豪チームに1点をとったことで盛り上がり、夜は久々の同窓会。ところが高校当時、主人公とトップ争いをしていた同級生の姿がない。聞くと、地元に帰っているが、事情があって出席できないという。

 聞くといてっもたってもおれず、宴会を途中で抜け出し、彼の元へと走る。その同級生とは35年ぶり。一見しただけで、苦労の跡がうかがえる。ところが、彼は屈託なく、主人公を迎え入れる。

 聞くと、彼は京大を卒業後、そのまま研究員として大学に残り、相当の研究実績を残すが、ある日突然、妻子が交通事故に遭い急死。そのショックから容易に立ち直れず、自死まで考えるが、死にきれず失意の中で故郷へ帰る。以後、父が営んでいたカメラ屋を継承、ボケた父親との侘しい男所帯を営んでいた。しかし、今ではどこかで達観し、心静かに生きている。そんな中、彼が主人公に伝える。

「死んだ女房の口癖を思い出してさ。俺が何か落ち込んだりして、昔は良がかっただのって嘆いたりするたびに、女房は東京の下町の女だからべらんめえで叱るのす。『ああ、しゃらくさい。思い出と戦っても勝てねンだよっ』てさ」。

 俺は黙った。彼も無言でビール飲んだ。

 ああ、俺は定年以降、俺は定年以降、思い出とばかり戦ってきたのではないか。思い出は時が経てばたつほど美化され、力をもつものだ。俺は勝てない相手と不毛な一人相撲を取っていたのではないか。

 以降、主人公は妻と別居し、故郷に帰って、残った人生を自分なりに生きようとする。

 ジャンジャン・・・。 

 内館牧子ってやっぱし面白い・・・。完全引退はあきらめるか・・・。

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