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知らなかったではすまされない、は本当か。

コラム 2022/12/01

ローマ時代の法の格言のなかに「事実の無知は弁疏となるが、法の無知は弁疏とならず」というものがある。
https://www.web-nippyo.jp/19506/ 出典:web日本評論

意味としては、事知の不知は許すが、法の不知は許さない、とのこと。
もう少し説明すると、罪を犯した行為自体を覚えていない、認識していない(「事実の不知」=事実の錯誤)は、故意犯(故意にそれを行った)としては罰せられないが、その行為自体が違法性があるということを知らなかった、というだけで行為そのものは自分で認識をしている場合、故意があったとして罰せられるというものである。

具体的事例で話をすると、たとえば「リクルート事件」で有名な「記憶にございません」という政治家の発言。これはこの法律の基本を知った上で、少しでも自分の罪を逃れるための答弁であることがわかる。賄賂をもらう行為自体が犯罪行為であるということはさすがに政治家であれば知っていなければ、そもそもの素質・素養が問われる。ただ、その犯罪行為自体を自分が行ったかどうかという事実を認識していないと答えることで故意犯という罪は逃れようというものである。
※内田樹の研究室 http://blog.tatsuru.com/2021/04/21_1240.html

採用調査という仕事で考えた場合。
就職面接のときに、申告していない職歴があったり、賞罰欄に何も記載がないが実際には罰則があったりした場合、その理由には以下3つのパターンがある。
①「故意」に隠したのか
②たまたま忘れていただけなのか
③書く認識がなかったのか

上記3つの中で罪が最も重いのは①であることは異存がないとして、②と③の場合が問題である。
③は常識を知らないという点でマイナス。ただ故意性が皆無ということでいうと、言葉は悪いが単なるバカである。②に関して嘘である可能性と、仮に本当に忘れていた場合であっても注意力の散漫さ、記憶力のなさなどは問題である。

そして往々にして多い返事は当然のように②である。罪が無いわけではないが、軽く、場合によってはマイナスにもならないからだ。

さてここで、個人的に印象深いエピソードを一つ。
もうかなり前のことだが、昔勤めていた職場で会社の女子会を開くからみんな来てね~と言われた。しかも前日の夜にメールが回ってきた。行く予定はしていたが、結局仕事が残って行けなかった翌日、その女子会を開いた女性リーダーの上司(こちらは男性)がでてきて、「なんでお前は職場の和を乱すような行動をするんだ!」と叱責を受けた。女子会も会社行事。女子同士の絆を深めるために一生懸命考えた女の子がいるのに、そこに参加しなかった年上のお前は頭がおかしいのかという叱責であった。私を含め不参加だった女性数名が会議室に集められて尋問が始まったが、そこで一人は「そもそも飲み会があることを知らなかった」と主張。メールも見ていなかったとのこと。LINEの時代ではないから既読がつかず、しかも業務時間外のよるに送られてきた個人的なメールを見ていないからと言ってそこまで深く追求をする事はできない。それを聞きながら私はなんとなーく、嘘だろうなとは思った。就業時間中もしょっちゅう手元の携帯を覗き込む習性がある彼女は、知ってはいたが知らないことにしたんだろうなと。しかしそれが一番これ以上の追求を避ける賢明な方法でもあった。そして知らなかったという後輩分も含めて、女性メンバーをまとめられていないという理由で私はひどく叱責を受けた。

そんな私は、
②の理由が通用しなくなる世の中など、なんと息苦しいことか。
②の返答をする場合に基本的に疑ってかかる姿勢の人はなんと卑しいことか。
そう思っていたことはある。しかし、そんな私自身もなんとなく、それは嘘だろうなーと上記のエピソードのように思っていたりもする。

一番の問題はなにか。
共同体として生きていく上で杓子定規に物事の善悪は決められないし、嘘を言う心理、そう言わせる環境、また仮にそれを許した場合のリスクと、許さなかった場合の歪み・・・有象無象のものが混じり合う。その上でも理想論と「こうであればいいな」と望む環境へ持っていこうと腐心することをやめてはいけないのだと思う。

池波正太郎の「鬼平犯科帳」シリーズで、”うさぎ”の愛称で親しまれる木村忠吾(同心)が突然の夕立に加えて鳴り出した雷に驚き、お頭(長谷川平蔵)を前にして、部屋の押入れに飛び込むというシーンがある。しばらくして雷が収まり、我に返った忠吾が恐る恐る押入れから這い出してきてお頭の前で必死に言い訳を始める。そこで平蔵は一言「わしは何も見ておらん」。

何度読み返しても人間ドラマの深さに学ぶものは多い。

採用調査・人事調査機関の株式会社企業サービス

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