人を辞めさせること
中小企業の経営者の条件とは何だと思いますか――?
そう聞かれた時、私は答えを用意していなかったので瞬時考えて「責任を取れること、でしょうか?」と答えた。
これどうしてくれんねん!
どう責任とるつもりや!
言葉遣いはなんであれ、そうやって詰められるときに答えられない経営者は経営者足り得ない気がする。
以前の職場でも結局揉めに揉めると「責任者出せ!」となる。
責任者は私です、と言い切り話を収めてこいと言われたのが「幹部クラス」として採用されたベンチャー企業における自分の立ち位置であった。
でもってその会社では全員が「幹部クラス」候補と言われ、営業はみな同じことを経験した。
それを出来た人が伸びて、出来ない人は辞めるか、いながらにして存在感を消した。
そういう世界だった。
質問をした方は答えた。
「トップ営業マンであることと、人を辞めさせられること」。
人を採用することは誰でも出来る。いてはならないひとを辞めさせることができるのは経営者だけだ、と。
我々の仕事は採用前の候補者のバックグラウンドチェックだ。
時々人事担当者がぼやく。「なんでこんなやつ採用したんやって言われても、面接でそんなんわかるかい・・・」。
この間電車内で就活生らしき人たちの会話。「実際、面接だけでなんてわからんやん。こないだの説明会ブースで人だかりやったところ、去年うちの大学卒業したミスキャンパスを採用担当でブースに座らせてた。」
学生も採用担当も、面接だけでお互いがわかるなんて思ってないのだ。
そしてその後の苦労をもっとも感じるのが責任者もしくは経営者だ。
中小企業の経営者の条件として挙げられるくらい、入った人を辞めさせることは難しい。
翻って、採用時に見極めることも同じくらい難しい。
とある社労士の方の話。
「事前に会社規定をつくって、それに違反していれば退職してもらう。その事前規定を作っていない会社側の問題でしょう。」
労務裁判事例一つ取ってみても、規定の有無一つで簡単に解決したものなどいかほどあるのか。
法律は人の後からついてくるもの、とはよく言ったもので、葵の御紋のようにそれ一つで一件落着となることなど、ほぼ無い。